- ジャンル
- 小説
- ISBN
- 978-4-86476-751-4
- ページ数
- 184ページ
- 判型
- 並製本 B6判
- 発売日
- 2019年11月10日
- 価格
- 定価990円(本体価格900円)
- 分類コード
- 0093
稲穂の揺れる村に生まれて
棚田と雪景色は見ている分にはきれいだ。けれど、そこで暮らす人々にとって、それは生活との闘いである。稲作は春の田植えから秋の穫り入れまで、心の休まる時はない。冬の雪は、春になればみんな解けて水になるものを、人々は毎日汗を流して除雪する。
これは、魚沼の山村に生きる農婦とその家族の物語である。貧しい農家に生まれた菊枝は、大正末期、二十歳で嫁ぐ。一男二女に恵まれ、慎ましくも穏やかな日々を過ごしていた。が、時代は日中戦争、そして日米戦争へ。長男は徴兵され、戦死。夫はその落胆から病死する。
終戦後、菊枝は二人の娘と家を守るため歯を食いしばって働く。長女が婿を迎えるが、「長女」であることで「跡取り」にさせられた不条理に抗議してか、長女は子を産んですぐ後、ほかの男と情死する。菊枝の願いもあり、婿は家のため、子のため、次女と再婚することに。
やがて時代は高度経済成長期へ。国全体は豊かになったはずなのに、農村は後継者不足、嫁不足、過疎化、減反……という冬の時代に。そんなおり、地元選出の田中角栄が総理大臣に就任する。田中は戦死した長男の戦友だった。菊枝は、農村の窮状を訴えるべく、田中の母フメに会いに行く。
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