- ジャンル
- 論文・学術書・参考書
- ISBN
- 978-4-86476-733-0
- ページ数
- 640ページ
- 判型
- 上製本 四六判
- 発売日
- 2019年10月10日
- 価格
- 定価3,080円(本体価格2,800円)
- 分類コード
- 3093
源氏狭衣百番歌合釈考
『源氏狭衣百番歌合』は、藤原定家が『源氏物語』の歌と『狭衣物語』の歌を撰歌して、百番の歌合に構成した作品。『物語二百番歌合』の第一編の『百番歌合』で、『源氏狭衣百番歌合』というのは別称。
藤原定家の撰で、この作品を通じて定家の物語理解を探ることが出来ると考えられてきて、その点から注目されてきた。
しかし、この歌合は、特異な作品で、語釈や通釈をするだけでは「解けない」。
たとえば、次の十九番はどう解くべきだろうか。
十九番 左 空蝉の身をかへてける木の本になほ人がらの
なつかしきかな、とかきつけたまへるを見て
空蝉尼公
空蝉の羽に置く露の木がくれて忍び忍びに濡るる袖かな
右 夏ころ源氏の宮の御前にて、梢の蝉の鳴きいで
たるを聞かせ給ひて
声たててなかぬばかりぞ物おもふ身は空蝉におとりやはする
「空蝉」が出てきて、蝉のように「泣く」登場人物が出てくる。しかし、それで満足してはいけない。
この二首の背後には、真剣に「碁盤」に向かう女君、という姿があるのである。その女君を光源氏や狭衣の大将が垣間見をするというのが、この二首の組合わせの鍵となっている。
こんなふうに、読者は、藤原定家による「謎かけ」を解読しなければならない。
そこで、本書では各歌の背景と歌の解釈をし、あれこれときほぐすことによって、百の番の「謎かけ」に挑んだ。「釈」によってなった一応の答えが「考」だが、各歌の要素を整理した見出しを付していて、そちらが眼目となっている。
本書は、『百人一首解きがたり』の著者が、久良岐古典研究所叢刊の新刊として作成したもの。どちらも藤原定家という撰者によるものなので、構成のしかたが良く似ていることも注意されよう。
『百人一首解きがたり』は一般向けで、小説仕立てであったが、それとは違って、先行研究や参考文献を押さえている専門書として企画された。
さて、次の二首には何が隠れているのだろうか。答えは意外なもので、解けた人は、きっと驚くことでしょう。(もちろんそんな答えはあり得ないと言う人も多いかと思います)
七十九番 左 蓬生(よもぎふ)の住処(すみか)おぼしいでて、なほ分けいり給ふとて
(光源氏)
たづねても我こそ問はめ道もなく深き蓬(よもぎ)のもとの心を
右 入道一品の宮(一品の宮)にて、一品の宮(飛鳥井姫)を
見たてまつらせ給ひて
(狭衣)
しのぶぐさ見るに心はなぐさまで忘れがたみにもる涙かな
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